

暑い夏の日、キンキンに冷えたビールに氷を入れたくなった経験はありませんか?多くの人が「体に悪いかも」と躊躇してしまいますが、その真相に迫ってみましょう。
ビールに氷を入れることの是非は文化によって大きく異なります。日本では「邪道」とされがちな一方で、東南アジアの国々では当たり前の飲み方として親しまれています。


この記事では、キリンのビール博士こと山本武司さんの見解も交えながら、冷たすぎる飲み物が胃腸に与える影響から、ビール本来の味わいを楽しむコツまで徹底解説します。
あなたの体質や好み、シーンに合わせた最適なビールの楽しみ方を知って、今年の夏はより美味しくビールを楽しみましょう!
この記事のポイント
- 冷たすぎるビールは消化酵素の働きを弱める
- 氷入りビールは血管収縮で血圧上昇の可能性
- ビールの最適温度は6〜8℃
- 氷入りは酔いにくくゲップが出にくい
ビールに氷を入れると体に悪い?真相を解説
冷たすぎる飲み物の健康への影響
ビールに氷を入れて飲むと、体にどんな影響があるのか考えたことはありますか?実は冷たすぎる飲み物は、私たちの体に様々な影響を与えています。


私たちの体は約37度で最もよく働くようにできています。キリン広報担当の山本武司さん(ビール博士)によると、ビールの最適な温度は6度から8度とされています。これより冷たすぎると、体に負担がかかってしまいます。
冷たすぎる飲み物を飲むと、まず内臓が急に冷やされます。これにより、消化酵素(しょうかこうそ)の働きが弱くなり、食べ物の消化がうまくいかなくなります。消化酵素とは、食べ物を分解して栄養にする大切な物質です。


また、冷たい飲み物を一気に飲むと、血管が急に縮んでしまいます。血管が縮むと血液の流れが悪くなり、栄養や酸素が体の隅々まで届きにくくなります。
夏は特に注意が必要です。暑いからといって冷たいビールをたくさん飲むと、夏バテの原因になることもあるでしょう。夏バテとは、食欲がなくなったり、体がだるくなったりする状態のことですね。
胃腸が受ける刺激と不調の関係
冷たいビールに氷を入れると、胃腸はどうなるのでしょうか?実は、胃腸は温度の変化にとても敏感なんです。
冷たい飲み物が胃に入ると、胃の血管が急に縮みます。
すると、胃の動きが鈍くなり、食べ物の消化が遅くなります。
これが続くと、胃もたれや胃の不快感の原因になることがあります。
また、冷たい飲み物は腸にも影響します。
腸が冷えると、腸の中にいる善玉菌の活動が弱まります。
善玉菌は私たちの免疫力を高める大切な働きをしているので、その活動が弱まると体の抵抗力も下がってしまいます。
さらに、冷たい飲み物を急に大量に飲むと、腸が急に動き始めることがあります。
これを「蠕動運動(ぜんどううんどう)」といいます。
蠕動運動とは、腸が波のように動いて、中身を進める動きのことです。
この動きが急に活発になると、お腹がゆるくなることもあるのです。
ビールに氷を入れると、炭酸も抜けやすくなります。
山本さんによると「氷をビールに入れるとき、あるいは氷の入ったグラスにビールを注ぐときに通常以上に泡立つので、炭酸が抜けやすくなります」とのこと。
炭酸が抜けると、ゲップは出にくくなりますが、ビール本来の爽快感も失われてしまいますね。
急激な温度変化で血圧が上昇する仕組み
冷たいビールを一気に飲むと、体の中で何が起こるのでしょう?実は、急な温度変化は血圧にも影響するんです。
私たちの体は、急な温度変化に対して防御反応を起こします。
冷たい飲み物が体内に入ると、体は「冷たいものが入ってきた!温めなきゃ!」と反応します。
そのため、血管が収縮して血圧が上昇することがあるのです。
これは「寒冷刺激(かんれいしげき)」と呼ばれる現象です。
かき氷やアイスクリームを食べたときに頭が痛くなる経験はありませんか?これも同じ原理です。
国際頭痛学会では、これを「寒冷刺激による頭痛」と分類しています。
冷たいものを口に入れると、上あごの近くにある「三叉神経(さんさしんけい)」という神経に刺激が伝わります。
この刺激が脳に「痛み」として伝わり、頭痛を感じるのです。
また、冷えた状態を回避するために頭につながる血管が膨張し、血液量を増やして温めようとすることも頭痛の原因になります。
このような反応は、体を守るための自然な反応ですが、高血圧の人や心臓に問題がある人にとっては負担になることもあります。
特に暑い日に冷たいビールを一気に飲むと、体への負担は大きくなります。
味や香りが損なわれる理由
ビールに氷を入れると、なぜ味や香りが変わってしまうのでしょうか?これには科学的な理由があります。
まず、氷が溶けることでビールが薄まります。
山本さんによると「氷がとけることで味が薄まります」とのこと。
これはハイボールや焼酎のロックでも同じですが、ビールは元々繊細な味わいなので、薄まると特に味の変化を感じやすくなります。
また、温度が下がりすぎると味覚も鈍くなります。
一般的に、食べ物・飲み物は体温との温度差が25℃以上あると美味しいと感じますが、5℃以下になると感覚が麻痺して味を感じづらくなります。
ビールの最適な温度は6~8℃という狭い範囲なので、氷を入れて急激に冷やしすぎると、ビール本来の味わいを楽しめなくなってしまうのです。
さらに、温度によって感じる味も変わります。
例えば、甘みは30℃くらいから体温に近いほど強く感じ、低温になるほど弱く感じます。
ぬるくなったジュースやアイスクリームが甘く感じるのはこのためです。
一方、塩味は温度が低いと強く、高いと弱く感じます。
日本のビールは「ドライビール」と呼ばれる、コクとキレが特徴の淡色ラガーが主流です。
このタイプのビールは、氷を入れると「きりっとしたのど越し」が失われてしまいます。
また、きめ細やかな泡も、氷を入れることで炭酸が抜けやすくなり、維持できなくなります。
メリットとデメリットを比較
ビールに氷を入れることには、良い点も悪い点もあります。
ここでは、それぞれを比較してみましょう。
メリット | デメリット |
---|---|
冷たさが長持ちする | 味が薄まる |
酔いにくくなる | 風味が損なわれる |
ゲップが出にくくなる | 泡立ちが悪くなる |
喉越しが爽快になる | 体が冷えすぎる可能性がある |
ビールが苦手な人でも飲みやすくなる | 胃腸への負担が増える |
メリットとしては、まず冷たさが長持ちすることが挙げられます。
特に暑い日や屋外でのバーベキューなど、ぬるくなってしまう心配がある場面では重宝します。
また、氷が溶けることでアルコール度数が下がるため、比較的酔いにくくなります。
山本さんも「氷によって味が薄まりますので比較的酔いにくくなります」と言っています。
ただし、「比較的」なので飲みすぎには注意が必要です。
さらに、炭酸が抜けやすくなるため、ゲップも出にくくなります。
山本さんによると「炭酸含有量が減少することで、理論上はゲップが出にくくなると言えます」とのこと。
社交の場では、これは大きなメリットになるでしょう。
一方、デメリットとしては、味が薄まることや風味が損なわれることが挙げられます。
特に日本のビールは、氷を入れると本来の味わいが楽しめなくなる可能性があります。
また、泡立ちも悪くなります。
ビールの泡は「外へ逃げようとする炭酸ガスをおさえ、おいしさを守るふたの役割をしています」と山本さんは説明しています。
泡がなくなると、ビールが空気と触れて味が落ちてしまうのです。
最近では、氷を入れることを前提に味が調整された「氷専用ビール」も発売されています。
また、タイのシンハービールやメキシコのコロナビールなど、氷と相性の良いビールもあります。
自分の好みや場面に合わせて、上手に選ぶといいですね。
美味しいビールの飲み方と最適な冷やし方
最適な温度で楽しむコツ


ビールをおいしく飲むためには、温度がとても大切です。キリン広報担当の山本武司さん(ビール博士)によると、ビールの最適な温度は6度から8度だそうです。
この温度より冷たすぎると、ビール本来の味や香りを感じにくくなってしまいます。逆に温かすぎると、のどごしの爽快感がなくなり、苦味が口に残ってしまうのです。
ビールの種類によっても最適な温度は少し違います。
ビールの種類 | 最適温度 | 特徴 |
---|---|---|
ラガービール | 6~8℃ | スッキリとした味わい、キレが特徴 |
エールビール | 8~13℃ | コクのある味わい、香りが特徴 |


冷やしすぎると味覚が鈍くなり、ビールの繊細な風味を感じられなくなります。一般的に、食べ物や飲み物は体温との温度差が25℃以上あると美味しく感じますが、5℃以下になると感覚が麻痺してしまうのです。
ビールを適温で楽しむには、冷蔵庫から出してから少し時間を置くのも良い方法です。特にエールビールは、冷蔵庫から出して3~4分ほど常温に置いてから飲むと、香りが広がって一層美味しく感じられるでしょう。
炭酸と泡立ちを保つ方法
ビールの魅力の一つは、あのきめ細かな泡と爽快な炭酸感ですね。
実は、この泡には大切な役割があるのです。
泡は単に見た目が良いだけではなく、「フタ」の役割をしています。
ビールの液体部分を空気から守り、炭酸ガスが逃げるのを防いだり、風味が逃げ出したりするのを防いでくれるのです。
山本さんによると「ビールの泡は、外へ逃げようとする炭酸ガスをおさえ、おいしさを守るふたの役割をしています」とのこと。
泡と炭酸を保つためには、以下のポイントが重要です:
1.グラスを清潔に保つ - 油分や洗剤の残りがあると泡がすぐに消えてしまいます
2.適切な温度で保存 - 5~7℃で冷やすと炭酸が適切に溶け込みます
3.注ぎ方に注意する - 正しい注ぎ方で泡の質が大きく変わります
理想的なビールの液体と泡の比率は7:3と言われています。
この割合を作るには、まずグラスを垂直に持ち、缶の注ぎ口を下に向けて少し高い位置から注ぎます。
グラスの半分くらいまで泡ができたら一度止め、泡が落ち着いたらグラスを傾けて静かに注ぎ入れるのがコツです。
きめ細かな泡は、ビールの味わいを引き立て、飲み心地を良くする重要な要素です。
泡が多すぎると損した気分になるかもしれませんが、実は泡の方がビールよりもアルコール濃度が高いことが科学的に証明されています。
「泡もビールである」という認識が広まったのはこのためなのです。
アルコール濃度を維持する重要性
ビールに氷を入れると、見た目は涼しげになりますが、アルコール濃度が下がってしまいます。
なぜアルコール濃度を維持することが大切なのでしょうか?
まず、ビールの味わいはアルコール濃度とも深く関係しています。
一般的なビールのアルコール度数は約5%で、このバランスが絶妙な味わいを生み出しているのです。
氷が溶けることでアルコールが薄まると、ビール本来の味わいが損なわれてしまいます。
アルコールの体内での働きも重要です。
アルコールは体内で分解されるとき、まず「アセトアルデヒド」という物質に変わります。
この物質が二日酔いの原因になるのですが、体内のアルコール濃度が安定していると、肝臓が一定のペースで処理できます。
アルコール血中濃度 | 状態 | ビール500mlの場合 |
---|---|---|
0.06% | ほろ酔い | 約1本 |
0.2% | 泥酔 | 約4~5本 |
0.4% | 危険な状態 | 約9本以上 |
肝臓は1時間あたり約7gのアルコールを分解できます。
これはビール中ビン1本分のアルコールの約3分の1に相当します。
つまり、ビール1本を完全に分解するには約3時間かかるのです。
氷を入れると確かに「比較的酔いにくくなる」と山本さんも言っていますが、それでも飲みすぎには注意が必要です。
特に暑い日には喉が渇き、ついつい飲みすぎてしまうことがあります。
アルコール濃度を維持するためには、氷を入れずに適切な温度で飲むことが大切です。
どうしても冷たいビールが飲みたい場合は、ビール自体を適切に冷やす方法を選びましょう。
世界各国の飲み方の違い
世界中で愛されているビールですが、国や地域によって飲み方は実に様々です。
日本では氷を入れずに飲むのが一般的ですが、他の国ではどうなのでしょうか?
タイやベトナムなどの東南アジアでは、暑い気候のため、ビールに氷を入れて飲むのが一般的です。
タイの「チャン」ビールを注文すると、大きな氷とストローが付いてくることもあります。
タイ語で「チョンゲーオ!」(乾杯)と言いながら、氷入りビールを楽しむ文化があるのです。
一方、ドイツでは泡がクリーミーで、グラスの半分以上が泡というビールの飲み方が一般的です。
また、意外なことに冷蔵庫で冷やさず、常温に近い状態で保管していることも多いようです。
国・地域 | 特徴的な飲み方 |
---|---|
タイ・ベトナム | 氷を入れて飲む |
ドイツ | クリーミーな泡を重視、あまり冷やさない |
メキシコ | ライムを添えて飲む(コロナビールなど) |
アメリカ | 「ショットガン」という缶に穴を開けて一気飲み |
チェコ | 世界一のビール消費国、ピルスナーが有名 |
メキシコのコロナビールにはライムを添えるのが定番で、これに氷を加えると爽やかな飲み物になります。
アメリカの若者の間では「ショットガン」という、ビール缶の横に穴を開けて一気に飲む方法も人気です。
チェコは1人当たりのビール消費量が世界一の国で、「ピルスナー」というビールスタイルの発祥地です。
ここでは、ビールを芸術品のように扱い、注ぎ方にもこだわりがあります。
このように世界各国でビールの飲み方は異なり、その国の気候や文化を反映しています。
日本のビールは「ドライビール」と呼ばれる、コクとキレが特徴の淡色ラガーが主流ですが、これは氷を入れるとその特徴が失われやすいのです。
氷なしで美味しく冷やす方法
ビールを氷なしで美味しく冷やす方法はたくさんあります。
急に飲みたくなったときや、冷蔵庫に入れ忘れたときに役立つ裏技をご紹介しましょう。
最も速く冷やす方法は「氷水に塩を入れて回す」方法です。
塩を入れると水の氷点が下がり、より効率よく冷やせます。
ボウルに氷と塩を入れ、その上に横向きに缶を置いて1分強回し続けると、なんと約2分で8℃まで冷えるのです!
冷やし方 | 所要時間 | 特徴 |
---|---|---|
氷水に塩を入れて回す | 約2分 | 最速だが手が冷たくなる |
濡れたキッチンペーパーを巻いて冷蔵庫へ | 約10分 | 手間がかからず簡単 |
水に濡らした布を巻き風を当てる | 約15分 | 冷蔵庫や氷がなくても可能 |
氷水に入れるだけ | 約5分 | 簡単だが回すより時間がかかる |
濡れたキッチンペーパーを缶に巻いて冷蔵庫に入れる方法も効果的です。
これは水分が蒸発するときの気化熱を利用した冷却方法で、約10分で飲み頃温度になります。
また、布を水で濡らして缶に巻き、扇風機などの風を当てる方法もあります。
これは冷蔵庫や氷がない場所でも試せる方法です。
注意点として、ビールを冷凍庫で冷やすのはおすすめできません。
缶の中の炭酸ガスが凍ることで体積が増え、缶が破裂する危険があります。
また、完全に凍っていなくても開けたときに噴出しやすくなったり、風味が変わってしまったりします。
最近では、冷凍庫で3~4時間冷やしたステンレス製コースターをグラスの底にセットして、底から冷やす「The Chill Series」というアイテムも登場しています。
これを使うと氷を使わずに約1時間冷たさをキープできるそうです。
ビールを美味しく飲むためには、適切な温度で保存することも大切です。
直射日光を避け、高温や低温の場所には置かないようにしましょう。
暗くて涼しい所に保存すれば約9カ月は風味が変わらないと言われていますが、本来のおいしさを味わうためには早めに飲むのがベストです。
ビールに氷を入れると体に悪い?真実と対策を解説:まとめ
Q&Aでまとめますね。
質問(Q):
冷たすぎるビールは体にどんな影響がありますか?
回答(A):
消化酵素の働きが弱まり、血管が収縮して血流が悪くなります。
質問(Q):
氷入りビールは胃腸にどう影響しますか?
回答(A):
胃の動きが鈍くなり、善玉菌の活動が弱まり、お腹がゆるくなることがあります。
質問(Q):
冷たいビールを一気飲みすると血圧はどうなりますか?
回答(A):
血管が収縮して血圧が上昇し、特に高血圧や心臓疾患の人には負担になります。
質問(Q):
ビールに氷を入れると味はどうなりますか?
回答(A):
氷が溶けて薄まり、温度が下がりすぎて味覚が鈍くなり、本来の風味が損なわれます。
質問(Q):
氷入りビールのメリットは何ですか?
回答(A):
冷たさが長持ちし、アルコール度数が下がって酔いにくく、ゲップも出にくくなります。
質問(Q):
ビールの最適な飲み温度は何度ですか?
回答(A):
ラガービールは6~8℃、エールビールは8~13℃が最適です。
質問(Q):
ビールの泡にはどんな役割がありますか?
回答(A):
炭酸ガスが逃げるのを防ぎ、風味を保護する「フタ」の役割をしています。
質問(Q):
アルコール濃度を維持する重要性は何ですか?
回答(A):
本来の味わいを楽しめ、肝臓が一定ペースでアルコールを処理できます。
質問(Q):
世界の国々ではビールをどう飲んでいますか?
回答(A):
タイやベトナムでは氷入り、メキシコではライム添え、ドイツでは泡を重視しています。
質問(Q):
氷なしでビールを早く冷やす方法はありますか?
回答(A):
氷水に塩を入れて回す方法が最速で、約2分で適温になります。
冷たいビールは美味しいですが、氷を入れると体への影響や味の変化があることがわかりましたね。体調や好み、シーンに合わせて飲み方を選ぶのがベストです。適温で飲むことで本来の味わいを楽しめる一方、社交の場では氷入りの方が良いこともあります。冷凍庫での急冷は避け、塩水や濡れタオルなどの方法を活用してみてください。
夏の暑い日には冷たいビールが恋しくなりますが、体のことも考えながら楽しむと良いですよね。この記事が皆さんのビールライフの参考になれば嬉しいです。最後まで読んでいただき、ありがとうございました!